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「うわっ!」
まさか人がいたなんて。
僕は慌てて顔を上げると、目の前にいたのはしゃがんだ姿勢で僕を見下ろす女の子だった。
「え?いつから見てたの?」
「最初から」
全く気が付かなかった。少し離れた場所には街灯があるし、月明かりで明るいから人がいたらわかるはずだ。
僕はプールサイドに上がろうとして、自分がボクサーパンツ一枚だったことを思い出し、その場に腰掛けた。
僕の方に歩いて来るその子を見ると、小柄で華奢な印象だった。
髪は黒のストレート。
Tシャツに短パンで、素足だ。
「自分も不法侵入だよね?」
「ううん、私は泳いでないし」
「でも勝手に入ってる。小学校の施設に」
そう。ここは小学校のプールだった。不法侵入という言葉がすぐに出てきたのは、自分がやっていることに自覚があったからだ。
プールを囲うフェンスを乗り越える時、「これって不法侵入?」と自分で自分に聞いていた。
そう、フェンスだ。このプールの入り口には当然鍵がかかっており、中に入るにはフェンスを乗り越えるしかない。
「あのフェンスを乗り越えたの?」
180センチを超える身長の僕には、小学校のプールのフェンスは楽々乗り越えられた。
でも彼女は小柄で、中学生ぐらいに見えた。
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