真夜中のレオ

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 自分の部屋に戻って、制服へと着替える。母の世間体を守るために、坂道を一時間も下って、中学校へと通う。義務教育を終えるまでは必ず学校へは行けと言うのが母の命令だった。しかし、学校に着いでも、おはようと私に声をかけるものはいない。代わりにゴミを投げつけられたり、持ち物を無断で持っていかれたりする。私はストレスの掃き溜めのような存在だった。担任の先生も黙認しているのだから、私にはもう抵抗の気力は欠片も残っていない。私がいてもいなくても同じだよ、と母には言うけれど、義務は果たせとの一点張りだった。  私は、今日も死を夢見て、夜空を眺める。このからだが夜闇に溶け込めばいいのにと思うのだけれど、世界はそれを許してくれないので、私のからだの輪郭は、今日もただ在り続ける。  今日は、星がよく流れていた。この時期は確か、しし座流星群の見ごろだっただろうか。流れ星がひっきりなしに流れる。けれど、願いごとを言う気力はないし、何を祈ることもない。ただ、見送る。この光景を美しいと感じられるのなら、それは幸せなのだろうなと思う。私には、空が泣いているように見える。  流れる星に見飽きて、私が目を閉じた、その時だった。  がらんと、どこからか大きな音がした。私は思いがけず、はっとからだを起こして、音がした方を見る。森の方から、煙のようなものが立ち上っていた。  星でも落ちてきたのだろうか。  そんな淡い期待を抱いている自分を、鼻で笑いながら、私は煙のする方へと近付いていく。森の中は、月の光も遮るぐらいに木々で覆われていた。ほとんど暗闇の中で、私は頼りなく立ち上る煙を目指して歩き続けた。     
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