真夜中に叫ぶ

3/12
前へ
/12ページ
次へ
後ろから香ってくる香水に、松井さんがそばに来たのがわかった。 「館長、歓迎会のあとカラオケに行くんですけど参加されます?」 「あー僕はいいよ。若い子達だけで行っといで」 「……瀬井さんは?」 一応誘ってくれるんですね。 「……私は遠慮しときます」 「そう」 この図書館に勤めて3年目だけど、みんなといまだに親しくなれない。 ここだけじゃない。 小学校も中学も高校も大学も、友達がいたことはなかった。 友達が欲しくないわけではない。欲しい。なんでも話せる味方が。 でもどうしても人付き合いが苦手で、怖い。 カラオケだって行ってみたい。レパートリーは割と豊富だ。 だけど……人前で歌うなんてきっと震えてしまう。 「瀬井さん、カラオケ苦手なの?」 「はい……あまり」 「ふーん」 なにその「ふーん」は。 なんか思うところがあるような一瞬の間は。 まさか、やっぱりあんたが“ユキオ”なの⁉︎
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加