0人が本棚に入れています
本棚に追加
後ろから香ってくる香水に、松井さんがそばに来たのがわかった。
「館長、歓迎会のあとカラオケに行くんですけど参加されます?」
「あー僕はいいよ。若い子達だけで行っといで」
「……瀬井さんは?」
一応誘ってくれるんですね。
「……私は遠慮しときます」
「そう」
この図書館に勤めて3年目だけど、みんなといまだに親しくなれない。
ここだけじゃない。
小学校も中学も高校も大学も、友達がいたことはなかった。
友達が欲しくないわけではない。欲しい。なんでも話せる味方が。
でもどうしても人付き合いが苦手で、怖い。
カラオケだって行ってみたい。レパートリーは割と豊富だ。
だけど……人前で歌うなんてきっと震えてしまう。
「瀬井さん、カラオケ苦手なの?」
「はい……あまり」
「ふーん」
なにその「ふーん」は。
なんか思うところがあるような一瞬の間は。
まさか、やっぱりあんたが“ユキオ”なの⁉︎
最初のコメントを投稿しよう!