真夜中に叫ぶ

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振り向くと、館長はベッドからコロコロと転げ落ちていた。 眼鏡を、バッグを、バレッタを拾って部屋から飛び出した。 入り口でカップルと鉢合わせしてギョッとされた。 気づくと、人の隙間で電車に揺られていた。 気持ち悪い。 いつもはあんななのに、目が怖かった。 わたしは、やっぱり人を信用することができない。 今日の視聴者はユキオの他に2人。 なんだか激しい曲を無我夢中で歌いたい気分だった。 でも、近所迷惑に配慮しいつもどおり静かめの曲を歌った。 「わたしの歌、どうですか?」 〇〇: サングラス取ってー △△: 脱いじゃいなよ なんて冷やかしが返ってきた。 ユキオは相変わらず無言。 そして、ギフトの花を投げて退室した。 「ご視聴ありがとうございました」 ユキオはたぶん、この地球のどこかにいて、たぶんどこかの部屋にいる。 今頃何してるんだろう。 窓から覗く月が不気味で、カーテンの隙間を閉じた。
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