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だっていつでも会えるし、とカズマは答えた
怒るに怒れないその返答にトモカはさらに言葉をぶつけた
じゃあ、カズマが落ちたら
それでも、どうもしないよ
仕方がないし、と
こいつはこう言う奴だったとトモカは改めて思った
気長に待つしかないかと半ば諦めた
それよりも、自分も勉強に集中しようと思った
変わらないものを無理に変えようとするよりもずっとマシだ
合格発表の日
トモカは緊張していた
けれど、意外としたたかな自分に気づいた
緊張を理由にカズマと手をつないだ
小さい頃以来だった
大きくなったカズマの手が妙に愛おしかった
手が脈打つのを感じた
無事に2人とも合格できた
さすがに抱きつきはしなかったが、2人は喜びを共有した
その日は二家族一緒に食事をした
だが、内心トモカは穏やかではなかった
トモカにとっての戦いはこれからであった
案の定、カズマはあの男のいる文芸部に入った
しかも、中学までとは通学路も変わり、帰り道も少しの間だが重なってしまう
あの男と言いながらも、トモカは別にその男加納のことが嫌いではなかった
物腰は柔らかだが、芯はある
丁寧で綺麗な言葉遣い
見た目も中性的で、正直言うと美形である
肌のキメはもしかしたら負けるかも知れない
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