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加えて、彼は先攻の利を生かそうとしていた。
後攻の利は先に述べた通りに論破合戦での有利なのだがでは先攻の利とは何か。それは空気を作ることである。
そもそもこの番組では編成上の理由から審査員によって勝敗が決められるが実際には観客の声で決まる。試合の後どれだけ多くの声援を沸かすことが出来るかで決着するのだ。
もちろん審査員たちもそのことを熟知している。だから会場をどれだけ盛り上げたが審査の一つのポイントとなっている。
どれだけ韻を踏んで正論を述べようともアガらないMCに勝利はないのだ。
だから禁紅は無敗の王者である自身の自己賛美を行い、同時にアングラを住処としている侠胆という男の正体不明をつついた。自身の支持者であるライトなファンにとって侠胆はよくわからないがなんとなく怖そうな人という印象である。それを利用する。
「闘争の方法、驚愕の内容まるで剣豪、みたいに両断する俺の押韻、を総動員してかます頂上の能力」
軽妙洒脱で耳障りはいいが軽いライムで十分だった。そもそも年齢が一回り以上違う二者なのだ。論破合戦ならどうしても侠胆に分がある。
「MC侠胆に捧げる黙とう、迎えられない輝く翌朝all right」
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