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「チャレンジャーッ!!カマァンッ!!」
司会の軽快な呼びかけと同時にスポットライトが点りステージは青一色に染まった。
そしてスモークをかき分けて舞台袖からその男が姿を現すと観客から割れんばかりの歓声が上がった。
決して秀麗な容貌をしている訳ではない。背が高いが全体的にがっしりとした体形をしているので瀟洒とは程遠い。浅黒く焼けた肌、短い黒髪、太い眉の下から除く鉈のような眼光、白皙の正反対にあるような男である。服装も黒い半そでTシャツに着古したGパンというラフなものである。Tシャツには赤い筆字体で『酔虎殿』というロゴがプリントされていた。
ただ、纏う空気が堅気のそれではなく、どこか暴力的な獰猛さを漂わせている。実際に堅気の勤め人ではない。自他共に認める不良である。Tシャツの袖から突き出た両腕には梵字の入れ墨がびっしりと刻まれている。
そんな彼がこんな歓声を受けるのには理由がある。彼は音楽家だった。芸名は侠胆という。
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