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司会の雄たけびに呼応する様に赤いスポットライトが灯った。真っ暗闇を切り裂くように侠胆とは逆の舞台袖を照らした。吹き上げられたスモークの中から若い男が現れた。
同時に先よりもやや高い歓声が上がった。
炎の様な赤に染めた髪を左右非対称に編み込み、右の耳に大ぶりなピアスをいくつも付けている。服装も素肌に銀の鋲が打たれた黒の皮ジャケット、赤いレザーパンツというロックスターのような恰好をしている。スラリとした体系をしており顔立ちも整っている。
恐らく「ラップスター」という言葉からはこんな男を想起するのではないだろうか、という華のある男である。
彼こそが現在無敗の『キング』、MC禁紅である。不愛想な侠胆とは対照的に彼はファンの歓声に人好きのする笑顔で手を振って応えた。
ステージ中央で司会にマイクを向けらえた。
「さて、禁紅くん。今日は師弟対決ってことだけど気分は?」
師弟という言葉に禁紅は苦笑した。
「んー、十年以上前の人間関係なんて今言われてもねぇ……」
そしてチラリと侠胆を見やった。
「まあ、カビの生えた老いぼれの死に水を取ってやることになるんじゃないっすか」
もちろんこれは番組を盛り上げる為の軽口である。
「おいっ!!」
リアルな言葉ではない、だから侠胆は一喝した。
「テメェ……、分かってんだろうな?」
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