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 それを、アングラを切り捨てた偽物(フェイク)と言う意見もあるようだが、侠胆にとってはどうでもよかった。  俺は、俺だ。  彼の芯はそれだけだ。  目の前の若者と美学と哲学を戦わせる。  今はそれだけだった。 「さーて、それじゃあビートをチェックします。DJジョニー、ビートを下さァイィ」  第一ラウンドのビートが流れ出した。それはどこか不穏で剣呑な、侠胆の音楽とよく似たものだった。目の前に視線をよこすと禁紅が不敵に笑っていた。 「面白れぇ……」  無意識に呟いていた。 「さーて、先攻後攻の選択権は挑戦者にあります。MC侠胆、先攻後攻は」 「後攻で」  考えるまでもなく答えた。  MCバトルとは口喧嘩であり、論破合戦である。ならば相手の意見を受けてそれに答える後攻が有利であることは言うまでもない。 「で、わ、第一ラウンド!!バトール、スタァァトゥ」  バトルが始まった。  同時に照明が切り替わる。まずは先攻キングの時間だ。  ビートと共にスポットライトが灯り会場が王者の赤に染め上げられた。 「yo yo 颯爽登場俺が王者、よう挑戦者」  ビートに合わせて手堅く押韻してゆく禁紅。それも末尾をそろえる脚韻だけでなく、単語の始まりで揃える頭韻を織り交ぜて観客を煽ってゆく。 「暴いてやるその正体、it’s show time」     
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