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八月頭。彼の仕事の都合で随分と過ぎてしまったけれど、今年もサーシャは律儀に俺の誕生日を祝ってくれるそうだ。
その日は余り俺の体調も良くはなく、夕方頃からゆっくりと準備を始めた。彼がくれたピアスを着けようと鏡の前に座り、久しぶりにゆっくりと自分と向き合う。知らぬ間に、随分と痩せた。元々骨格は恵まれている方ではないが、それなりに健康的な身体だったはず。
そう思えば今日に限らず、最近終始体調が余り良くはない。身体は怠く、動く気力も湧かない。それも全て、痩せすぎから来るものなのだろう。
「最近余り食べていないね」
落ちた肩を摩りながら、鏡の向こうでサーシャは悲し気に眉尻を下げた。生返事を返しながら、左耳にピアスを着ける。
「今日は何処へ行くの?」
「君が余り好きではない所」
それだけ言うと、彼は準備を終えた俺の手を引いて歩き出した。
余り好きでは無いところに連れて行かれると知らされ、余計に気分は重かった。そもそも何故そんな所に行かなくてはならないのか。
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