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閑かな教会に満ちる哀しみと慈しみの片隅で、俺の胸だけが別の感情により締め付けられてゆく。
彼の掌の柔らかさ、彼の震える声、夜の闇が齎す恐怖や、優しい涙。ラクリモーサに乗せて、決して償う事の出来ぬ罪を犯したあの日が閉じた瞼の裏側でうねるように浮かんでは消え、消えてはまた浮かぶ。
俺はただただ章雄君を想った。優しかった章雄君。天使のような美しい心を持っていた少年。穢れた悪魔に魅入られて奪われた哀れな命────。
祈るふりをして、声を殺して泣いた。
今更泣いて何になる。彼の死を痛み、その安息を願ったあの日に涙を流してはいけないと誓った筈なのに。
自分勝手な自分を呪った。章雄君の代わりに、俺がこの朽ち果てた翼で飛べばよかったのではないだろうか。こんな未来しか待っていないのならば、章雄君のような美しい心の少年が生き残るべきだった。
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