第七章 眠りを忘れたひとへ

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 サーシャ。貴方を愛せていたのなら、天羽さんに出逢わずにいたのなら、きっと俺たちは幸せと言うものを掴み取っていたのだろうね。けれどやはり、神は知っているのだ。俺がどれ程の事をしてきたか。サーシャが、今どれ程のひとを傷付けているのか。天羽さんが、どれ程の罪を重ね続けているのか。  俺たちはきっと、二度と幸福を願ってはいけなくて、それを手にしてもいけなくて。だがどうして、人間と言うものは欲深い生き物なのだろう。  深い罪悪感に苛まれながらも、こんな時にでも愛してくれるひとではない男を胸に描く俺がいて。天羽さんを想う心は、二度と朽ち果てる事は無いのだろうと言う根拠のない、けれど確信的な自信がある。結ばれる事は、きっと無いのに。  これを罰だと思うのは、どれ程に罪深い事なのだろうか。
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