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時は流れ去っても、憂鬱の雲は晴れず。向かいのアパートの窓も閉まりきっていて、サーシャは重過ぎる愛をぶつけるように俺を抱く。
誰もが疲弊してゆく。愛故に。
秋雨が硝子窓を濡らす。最近ぐっと冷え込んで来て、体調は悪くなる一方。サーシャを送り出したらまた布団に潜る為にガウンのまま、俺はリビングの窓辺に立っていた。
今日も、窓は閉まっている。
「天羽さんはいつ帰って来るの?随分と長い事いないけれど」
食後の珈琲を口に運んでいたサーシャは、一瞬こちらに視線だけを向けた。
「帰国と出国の日は教えてくれていたのだけれど、最近は言いたがらなくてね。帰って来ている時もあるようだが、君を警戒して近付かないようだね」
やはり、俺が避けられているのか。後悔はしていないが、こうも露骨に拒絶されるとかえって爆発してしまう予感がして怖かった。これ程まで誰かに心を奪われてしまう事が初めてで、どうしたら良いのか分からない。彼の迷惑も顧みず、自分の想いだけをただぶつけてしまうのも、慣れないが故なのだろう。
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