過去

2/4
前へ
/157ページ
次へ
 真っ赤に染まったバスタブはもう使えない。  シャワーで。  そう。  これからはシャワーで。  体の汚れを落とせばいい。  バスルームに長居は無用。  できない。  背中がざわつくから。  でも、まだ逃げ出せない。  血抜きを終えたモノを、何とか処分しなくてはいけない。  でもコレ、どうしよう。  重くて、わたし一人ではバスタブから引きずり出すこともできない。出したところでどうすればいいか。途方に暮れる。  重いから。  取りあえず、軽くしたい。  わたし一人で運べる大きさに切り分ける。線を引くように、表皮にナイフを走らせる。肉を露出させる。現れた肉を削いでいく。関節は小型ノコギリで切り外し、内臓はシャワーで洗いながら細かくしていく。排水菅を詰まらせないように、細心の注意を払う。  ゆっくり腰を据えてコトにあたれば、何とかできる。大丈夫。ここはマンション。人と人との繋がりは希薄だ。  水洗いをした肉と内臓は、できる限り細かく切る。フリーザーパックに小分けして入れる。できれば冷凍庫に。無理なら冷蔵庫に保管して、少しずつ捨てていく予定を立てる。  安売りのキャベツ、白菜やレタスを買う。葉を一枚一枚、剥がす。肉や内臓を葉の中央に載せて包んでいく。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加