序 章

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『鈴白を含む五村の地と、正武家の未来永劫の繁栄。現世(うつしよ)の如何なる物事は正武家に干渉せず』  どういうことかというと、玉彦の言葉を借りて言ってしまえば、 「要するにこの辺の土地は正武家に寄越せ、家が潰れないように加護しろ、それと戦や争いごとに巻き込むな、何かあっても正武家が関わる物事はそういうものだと思って首を突っ込むな」  だそうである。  随分な要求だけど、帝に認められて以来、その約束は今なお破られていない。  破れば何が起きるか誰にも分からず、なので無暗に反故には出来ない。  そして正武家も、今なお帝からの命を守り続けている。  この科学が発達した現代で何を馬鹿なことをと思う人もいるかもしれない。  実際私もまさかお祖父ちゃんの村がそんなところとは知らず、奇々怪々な出来事はテレビやネットの中の虚構の世界だと思っていた。  けれど中学一年生の夏休みにお祖父ちゃんの家へと預けられた私は、そこで奇々怪々な出来事を経験することになり、信じざるを得なくなったのである。  そして私は鈴白村で、正武家の跡取り息子、玉彦と出逢う。  同い年で、おかっぱ頭の、親友の小町曰く馬鹿みたいに端正な顔をした彼もまた、正武家として不思議な力を持っていた。  ツンデレで古臭い話し方の、寂しがり屋な玉彦は何だかんだと結局私を助けてくれていた。  様々な紆余曲折があり、玉彦とお互いの想う気持ちを確かめ合って夏休みが終わった私は鈴白村を後にする。
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