第九章 『偶数代の玉彦』

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「……それは何ともまた奇怪な話しであるな」 立ち上がった玉彦は両腕を伸ばして、左右に身体を揺さぶる。 子供たちは全員、玉彦に注目していた。 例のこっくりさん以降、こういう不可思議なことがあると正武家様の出番だと刷り込まれているらしい。 噂には尾ひれも胸びれも付いているようで、人間ではないのかもと広まった時には澄彦さんも苦笑いをしていたほどだ。 今の怪談話を聞いて、正武家の次代はどう思ったのかみんな興味津々だったけれど、当の玉彦は何食わぬ顔で話を切り出す雰囲気は無い。 痺れを切らした緋郎くんが和臣くんの肩を抱いて身体を解す玉彦をジト目で見つめる。 「玉ちゃんさー、どうにかしてくれよ」 「何をだ」 「だから電話ボックス」 子供ってある意味凄いと思う。 大人になると気安くどうにかしてくれなんて、正武家の次代にはお願いできない。 予約を入れて面会し、依頼をする。 そこにはお役目料というものが発生して、子供のお小遣い程度で払える額ではない。 でも鈴白村民はどうなのだろう。 以前のこっくりさん騒ぎの時にお役目料が発生したとは聞いていない。 もしかすると五村で起こるお役目に関してはお役目料が発生しないのかもしれない。 緋郎くんのお願いに意外そうに片眉を上げた玉彦は、ようやく自分が注目をされていたことに気が付いて顎に手を当てる。 「なぜどうにかしなくてはならない?」 「何でって、気味が悪いじゃんか」 「ほほう。では緋郎は気味が悪いものは排除するという考えなのだな? みなもそうか?」 すると子供たち全員が頷いたので、玉彦は少しだけ眉根を寄せた。
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