第九章 『偶数代の玉彦』

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玉彦と緋郎くんの言い合いのような問答は周りの人間を置いてけぼりにしてゆき、二人を放置する事に決めた私たちは早々にテントに撤収した。 豹馬くんと竜輝くんが張ってくれたテントは三つあり、それぞれ男の子、女の子、大人という風に分けていた。 そして私はというと、一応女の子テントに入り込んだのは良いけれど、狭そうなので彼女たちが寝静まったら大人テントへと移動する予定だ。 先ほど話を聞いたら、須藤くんと竜輝くんは夜通しで火の番をするみたいでテントを使用しない。 ただの荷物置き場だ。 そして玉彦は私と夜のとんぼ塚探しに出向く予定なので、子供たちが落ち着くまでテントで待機するつもり。 でも緋郎くんが中々粘っているので、ちょっと遅くなりそうだった。 今回参加した女の子は、希来里ちゃんとよっちゃんこと芳乃ちゃん、そして莉愛ちゃん。 莉愛ちゃんはちょっとぽっちゃりさんだけど、柔らかそうで可愛らしい。 ふんわりしたくせ毛に、ぱっちりした目。 きっとこのまま成長してある程度痩せれば、かなり化けると私は予想する。 希来里ちゃんは完成した日本人形の様だったけれど、小さな頃から可愛すぎると大人になってからの劣化が怖い。 そして芳乃ちゃんは、何となく出逢った頃の亜由美ちゃんを彷彿とさせる。 そんな三人は薄目の寝袋に収まり、顔だけ出して恋バナに盛り上がっていた。 須藤くんの云う通り、小さくても女の子、である。 会話に相槌を打ちながら外の様子を気に掛けていると、希来里ちゃんがゴロゴロと転がって私に体当たりをしてくる。 どうしたのかと目を落とすと、これでもかというくらいのジト目をしていた。 「ど、どうしたの」 「お姉ちゃんってさ、狡いよね」 「は?」
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