序 章

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 結婚一年目。  この年は様々なことがあり、私と血を分けた家族三人が亡くなってしまった。  このことについてはあまり話したくはない。  今でも不意に思い出して泣いて玉彦を困らせてしまうことがある。  もう大丈夫だと自分では思っていたけれど、心のダメージは深く深くひたすらに深い。  家族のことを忘れるはずはなく、いつか穏やかに思い出せる日が来ることを願うけどそれはまだまだ先のことだと思う。  とりあえず今は、触れたくない。  正武家のお屋敷には当主を始めとする面々が住んでいるけど、その中に『稀人(まれびと)』と呼ばれる人たちがいる。  彼らは正武家に付き従い共に移住してきた人たちで、主家である正武家に仕えている。  通常は当主に一人とされていて、先代の当主から次代の当主へと仕える。  なので現当主である澄彦さんの稀人は先代当主道彦の稀人であった御門森(みかどもり)宗祐(そうすけ)さんとその息子の南天(なんてん)さんが務める。  そして次代の玉彦の稀人は南天さんとその息子の竜輝(たつき)くんが務めることになるのだけど竜輝くんはまだ高校生のため、本格的には務めていない。  というのが本来の流れなのだけど、玉彦には彼らの他に稀人が三人存在している。  南天さんの弟である豹馬くん、遠い昔に御門森から血を分けた須藤涼くん。  二人は私たちと同じ年である。  そして清藤多門。因みに年は一つ下。  彼のご先祖は一度正武家から離脱してしまったけど舞い戻った経緯がある。  といってもずーっと昔の話でもう何百年も前の話。  正武家と清藤は主従関係で微妙な距離間を保ちつつ現代まで来ていたのだけど、様々な思惑と擦れ違いから反旗を翻した清藤は、正武家により粛清され取潰しとなった。  この時、私の家族は犠牲となってしまった。
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