第十一章 『亜由美と那奈と仁義と四馬鹿』

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……奇妙な関係になってしまった。 あれから七人でバイト先にの海の家に向かったのは良いけれど、今日も家の裏手で作業する私の隣には大沢先輩が黙々と隣の家のゴミの選別をしていた。 どうして隣の家の大沢先輩が私の隣にいるのかというと、幸か不幸か私が持つ御札のお陰で昨夜から具合が悪かった大沢先輩の体調が良くなるから。 昼間に彼女の姿は無い。 やはり太陽の下では出て来られないのだろう。 昨晩波打ち際で感じた何かの気配も鳴りを潜めている。 けれど霊障と呼ばれるものなのか、大沢先輩はそれに中(あ)てられて今朝は食事も摂れなかったようだ。 宿泊所の玄関先で昨夜私と見たものの話を大沢先輩が再度語り、私も視たと頷けばみんな黙り込んだ。 昨晩頑なに窓を開けるなと叫んだ大沢先輩に半信半疑だった三人は私も視たことにより、本当なんだと信用してくれたようである。 「どうする? 今はいないんだろう?」 そう言って私と大沢先輩を交互に見たのはお洒落顎髭面で精悍な鎌田先輩。 彼はここの赤石神社の息子だ。 海が良く似合いそうな風貌である。 「でもいつ出てくるのか分かんないんじゃね?」 大沢先輩の隣にしゃがみ込んだ薄茶色のロン毛で細身のチャラいのは工藤先輩。 緑林神社の息子。 この人が神主になる姿が想像できない。 「正武家様に御出座し願うか?」 利発そうな凛とした雰囲気を纏ったこの人は鳴黒神社の跡取り息子の後藤先輩。 家政科にいる小百合さんとはいとこにあたるそうだ。 染められていない黒髪が綺麗で鈴白を思い出す。 彼もきっと少なからず彼女の血を引いている。 四人の中で一番綺整った顔立ちをしていて、そして一番常識がありそうだった。 そんな彼の提案に三人が同時に首を横に振った。
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