第十一章 『亜由美と那奈と仁義と四馬鹿』

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「無理だろ。流れてもう現れないかもしれない。それに正武家様にコンタクト取れる奴、この中にいないだろ。親父通すと大目玉だぞ。お手を煩わせて何もありませんでしたじゃ申し開きもできない」 鎌田先輩が顎鬚を摩り唱えた異に二人が頷く。 すると那奈と亜由美ちゃんが同時に私を見たけど、何も言わない。 そう言えば二人に大沢先輩に正体を明かして信用してもらえなかった話をしていなかった。 なので正武家直通の私が動くのはこの四人に正体がバレてしまうと考えて何も言えないようだった。 「でもどうすんだよ。このままじゃ大沢が動けない」 「いや、なんつーか比和子ちゃんに会ったら身体が軽くなった気がする。恋の力」 力なく笑った大沢先輩を工藤先輩が小突く。 「こんな時に何言ってんだ、バカ」 「マジで、マジで!」 昨晩私を置いて逃げたくせに、何が恋の力だ馬鹿野郎。 絶対に恋ではないと否定するために私は本当の理由を話すことにする。 「あ、私、お守りを持たせて貰ってるからそのお蔭かも」 お守りというか御札だけど。 四人の前に手提げバッグから出した御札を出すと、食い入るように見つめる。 「これって、どこで?」 後藤先輩が手を伸ばしかけて引っ込める。 「え、うーんと同級生の人から」 言ってることは間違いではない。 玉彦は間違いなくクラスメイトだ。
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