第十一章 『亜由美と那奈と仁義と四馬鹿』

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私の数少ない経験上、御札で身体が軽くなったのなら悪いものが身体から離れた証拠だ。 大沢先輩が体調を崩した原因は昨晩の彼女とわかっていて、しかもお昼になっても出てこないので再び彼女に遭遇しない限り彼の具合が悪くなることは無いはずだった。 なのに大沢先輩は常に私の半径二メートル以内を必ずキープしていた。 午前中ずっとそんな感じでお昼になって、精神的に疲れた私は厨房で肩を落とす。 お兄ちゃんが握ってくれたお握りを食べてお茶で流し込む。 私の様子を気にかける茂雄さんは腕まくりをして大沢先輩を追い払う。 流石に海の家の主に威嚇されれば大沢先輩も大人しく引き下がった。 それもそのはずでもうすっかり体調は良くなっているはずなのだ。 私だって鬼じゃないから本当に具合が悪いのなら心配もして同情もするけど、仮病には付き合ってられない。 「鎌田の倅の友達がいやにくっ付いてるが、ありゃ何なんだ?」 悪い虫なら叩き潰すぞと息巻いた茂雄さんだったけど、大沢先輩が藍染神社の息子と知ると微妙な表情になった。 正武家から私を預かっている手前、安全第一だけれど、相手が神社関係の人間だとどうやら尻込みするみたいだ。 大沢先輩が言っていた通り、一目置かれるという現象なのだろう。 私は茂雄さんに大丈夫ですよ~と言いながら厨房をフェードアウトして裏手に出る。 お盆を迎える手前の時期は、外にいるだけでもこれでもかというくらい暑い。 鈴白村も暑いけれど湿度が低いのでまだ助かるけど、赤石村、とりわけこの砂浜は夏の太陽がさんさんと降り注ぎ、湿度も鈴白より高いのでたまったもんじゃない。 海の家の裏手は建物の陰になっているので砂はひんやりしていたけど、吹き抜ける風が熱風だ。 私は汗を拭って、ショートパンツの後ろポケットにしまっていたスマホを取り出す。 すると一件メッセージが送られてきていた。
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