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「隆弘。これあそこに運び入れておいてくれ。今夜のだ」
「はいっす」
「で、ついでに部屋見て軽く掃除も頼むな」
「はいっす」
茂成さんの指示に助かったとばかりにお兄ちゃんは段ボール箱を二つ軽々と抱えて、海の家のバイトたちが泊まる宿泊所へと道路を越えて行く。
私が逃げてったお兄ちゃんの背中を見送っていれば、茂成さんも私を見て変な顔をする。
「あの、何でしょうか。私の顔に何かついてますか」
「え、ついてないよ。気にしないで」
「ええぇ~……」
何だろう。
茂成さんもお兄ちゃんも私に何か隠してる気がする。
「あのっ!」
「あぁ、ほら昼休み終わるよ。浮き輪の数揃った? すぐに貸し出しに回してね。よろしく!」
「……はいー」
茂成さんの勢いに押されて私は大人しく引き下がる。
厨房を出るときに振り返れば、日焼けした茂成さんは冷蔵庫に頭を突っ込んで食材を取り出していて表情を伺うことはできなかった。
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