序 章

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 鈴白村の真ん中の、小高い山の上にある正武家様のお屋敷は、裏門からしか入られぬ。  当主次代惚稀人稀人、産土神の赦しが無くば表門は通られぬ。  正武家様のお役目は口出し無用の決まりごと。  正武家様の云い付けは問答無用の守りごと。  守らぬ者は消え失せる。  守れぬ者も消え失せる。  正武家様が居らぬこの地には永劫苦難が待ち受ける。  五村鈴白正武家様の揺るがぬお役目定め也。  私の従妹である十三歳年下の希来里ちゃんは、この歌を歌いながらお手玉をしていた。  きっと意味も解らずに歌っていたと思うけれど、この田舎の五村には確実に正武家への尊敬と畏怖が連綿と受け継がれている。  私はこの鈴白村で神守の役目を担いつつ、玉彦と共に生きて行くと決めた。  どんなことがあったとしても絶対に彼と共に在り続けるんだ。  そうして私は朝からお屋敷の片隅にある産土神の社に手を合わせた。
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