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盤の向こうで背筋を伸ばした吉岡、美しい白い手を握りしめ太ももの上に置く。そして、その手を太ももの付け根の方にゆっくと押し上げる。炎のように隆起し、そそり立つ吉岡。凛とした表情は、男性とは思えない美しい顔立ち。
「水嶋君……」
吉岡の囁くような震えた声に、割れた顎に力を込めて、ゴクリと唾を飲む、水嶋。
「今日は、帰さない……。ぼ、僕が、先手で……、いいかい?」
隆起した吉岡に何かを見た水嶋は、興奮を抑えられなくなってきたようだ。
「うん……、ひさしぶり……だよ……ね」
水嶋の誘いに、吉岡も声をうわずらせる。そして、正座していた足を少し崩して、靴下を片方だけ脱いだ。
「い、いくよ……。ま、まずは2六歩……」
先手の水嶋は、緊張で伸びきった三本の指をゆっくりと添え、静かに駒を動かす。まるで、吉岡の足の親指の辺りから、足の形に沿ってその指を這わせるかのように。
「あふっ……。なら、金を上げるよ……」
歩を上げず、金を上げた。守りに徹するのか、吉岡は腰をくねらせながら、水嶋の愛撫にこたえる。
じっくりと探るように、絡みつくように、歩を進めていく水嶋。
「ああ……、棒……銀……」
そして、棒の様にせり出した銀を握りしめ、グッと突き出す。水嶋の指先で、駒がびくりと脈打つ。
吉岡は、少し前かがみになりながら、もじもじと玉を隠すように指を動かす。
ふと。何かに気付いて、顔を横に向ける吉岡。隣の部屋で、誰かが覗いていたのか、物音と荒い鼻息が聞こえてきた。
「水嶋君。待って……、誰か……、いる……」
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