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第二幕 捜査
人里離れた場所にポツンと建つ一軒家。そこが事件現場、エスター邸だった。
「相変わらず、酷い光景だ」
事件現場を訪れたオズワルド・スペンサーは沈痛な面持ちで呟いた。無理も無い。部屋中に血の匂いが立ち込め、床には血で描かれたと思しき魔法陣。その中心に横たえられた遺体には首が無い。それどころか腹を裂かれ、内臓を引きずり出されているのだ。普通の人間、いや多少死体に慣れている人間でも吐き気を催す地獄絵図。如何に凶悪な殺人事件といえども、これほどの惨状はそうそうお目にかかれない。三十を少し超えたばかりのオズワルドには衝撃的な現場だ。
「これで五件目。全く……不甲斐ないな」
事件を防ぐことが出来なかった無力感にため息が漏れる。
オズワルドが一連の事件に携わるようになったのは三件目の事件からだ。あまりも凄惨な事件が続いて起こり手におえない、と現場の要請を受けて派遣された騎士。それがオズワルドだった。
それにも関わらず、こうして事件が止むことなく続いているのは不甲斐ないと言う他無かった。
「スペンサー卿、少しよろしいですか?」
憲兵の一人が進み出て声をかけてきた。
「どうした?」
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