第二幕 捜査

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「流石に事件が続きすぎており、街でも噂が出回っています。市民の間にも不安が広まっており、いつ大きな騒ぎに発展してもおかしくない状況です」  人の口に戸は立てられぬもの。事件を報じることは規制していたが、それで噂を完全に取り締まることは不可能だった。まして五件も事件が続けば猶更だ。 「すまないな、わたしが不甲斐ないばかりに。遺憾に思ってはいるが……」 「い、いえ。スペンサー卿への不満を言いたい訳ではありません」  素直に力不足を詫びて頭を下げるオズワルド。その姿勢に慌てたのは憲兵の方だった。 「とりあえず市民を安心させる為にも、少しは捜査が進展しているという報せを出した方が良いのではと思いまして」 「そうは言うが……」  実際にはなんの進展も無いと言っても良い。被害者たちの共通点も犯人の目星も何ら立っていないのだ。 「嘘の報せを流して市民を安心させろ、と言うのか?」 「それで捜査に支障が出るのなら問題かと思いますが、そういう訳でもありません。嘘も方便という言葉もありますし、市民の余計な混乱を招くよりは良いかと思います」  憲兵の言葉にオズワルドはしばし考え込む。憲兵は自分の言っていることに自信を持っているのか、ジッとオズワルドの方を見据えて答えを待っていた。 「確かに君の言う通りだ」 「では……!」     
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