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第三幕 騎士と魔術師
蝋燭の灯が揺れる。薄暗い部屋の中、ローブ姿の男が膝をついて祈りを捧げていた。床に大きく描かれているのは殺害現場にあったものと同じ魔法陣。いや、正確には五つの魔法陣を組み合わせた文様が描かれている、完全版の魔法陣だ。男の前には五つの首が一列に並べられていた。
扉の軋む音が鳴る。外の灯りと共に人影が部屋の中へ入ってきた。
「ヘクター。……お前だったんだな」
人影――オズワルドが声を絞り出す。
「ここを訪れるなんて。 何か思い当たる節でもあったのかい?」
「昔聞いた話を思い出したんだ。人間の命を代償に願いを叶えるという禁呪の話。それを俺に話してくれたのはヘクター、お前だったろう」
オズワルドの言葉に、男――ヘクターは微笑を浮かべた。
「そんな話を覚えていたとは」
「だから今回の事件について、禁呪について話を聞こうと思ったんだが。最悪の展開だな」
描かれている魔法陣も、並べられた首も言い逃れ出来るようなものでは無い。
「殺人、及び禁呪使用の罪で逮捕する。無駄な抵抗はするな。争いたくない」
ヘクターはゆっくり立ち上がるとオズワルドの方へ向き直った。
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