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階段を勢いよく昇る音が聞こえた後、間を置くことなくドアが勢いよく引かれた。ドアは勢いよく開き、止まることを知らずそのまま壁にぶつかりまた音を出す。おはよう、と母の大声で少女は目を覚ました。まるで祭りのように騒がしい。壁に掛かっている時計は八時前、手元にある目覚まし時計も八時前を指している。そのことを確認しながらゆっくりと少女は起き上がる。
それを見た母はいつも通り注意する。
「あんたねえ自分の部屋が欲しいってあんだけゆうから、わざわざ物置にしてた部屋を片付けてやったのよ?それなのに何回言えばわかるの!……ちょっと聞いてるの?」
不機嫌そうに言う母には、わかってるよおと相槌を打つが投げやりな所が見え見えだった。ゆっくりとナマケモノのように数十秒で着く学校へ行く支度をする。学校からは近いので遅刻はしないだろうと少女は安心しきっているのだろう。
「ちょっと!なんで今洗濯物出すの!?」
少女の悪事のせいでご飯を食べてる間も歯磨きをする間も終始母は鬼の形相である。慣れというものは恐ろしいものだ、少女は全く恐れることなく口を開く。
「あ! 今日ってもしかして、家庭科じゃない? エプロンどこ?」
「そんなこと知らないわよ! 自分の部屋にあるでしょ!」
速攻で母は少女に向かって怒鳴り散らす。八畳の茶の間にはつけているはずのテレビの音も聞き取り不可能だ。
「私だって忙しいの! 自分のものぐらい整理しときなさい!もう高校二年生でしょう!?」
そのあとも母の口は動き続けた。
少女はにやけながら玄関のドアに背中を向けては、いってきまーすと言って走り出していった。茶の間の窓からその姿を見た母は大きなため息をつき、コーヒーを煎れた。
次の日になった。階段を勢いよく昇る音が聞こえるとまた同じ朝を迎える。
夏になった。暑い日は布団に潜ることもないので母は少女に往復ビンタをして無理やり起こさせる。
秋になった。少女は布団にまた潜る季節になってしまったので母は悔やみながらも持ち上げては起こさせる。筋肉質になってきた自分の腕を見ては母は一人で苦笑した。
冬になった。布団に潜ったまま岩のように動かない少女をダンベルを持つがごとく、母は持ち上げた。少女はビックリして尻餅をついては痛がりながら仕方がなく起きた。
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