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これから先、手を携えて進めそうな・・・戦友。
「ごめん」
「いやだ、あなたが謝らないで。立場がないじゃない」
「・・・・うん。でも、ごめん」
気が付いたら二年以上の月日をともにしていたというのに。
彼の中に、何か大きな物が溶け込んでいて、けっして一つになれなかった。
いつからだろう。
あの、美しい人には敵わないのだと感じたのは。
彼の一番になりたかったわけではない。
でも、なりたかったのかもしれない。
今となっては、もう、どうでもいいこと。
「・・・幸せに」
ゆっくりと空いている腕を広げて、すっぽりと抱きしめてくれた。
こんなときでも、彼の腕は、優しい。
額に、彼の冷たい頬が触れた。
「勝己、あなたも」
背中にそっと手を回し、最後の時を味わう。
広くて暖かな、胸。
いつか、恋しくなることがあるかもしれない。
だけど。
私のものではないから。
だから。
私が、背中を押してあげる。
迷わずに、好きなだけ、あの人を抱きしめなさい。
「幸せに・・・」
私は、彼を愛するから。
あなたは、あの人を、愛して。
淡雪が、ふわりふわりと舞い降りる。
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