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盗聴器の調査を依頼してしまったという妻の言葉に、自分のほうでも信頼できそうなところを探すから今回は取り消してとなだめ、電話をかけて調査をキャンセルさせる。
夕食後、なかなか帰りたがらない妻のことを気遣って少しドライブに出かける。
しかし、いつまでも走り回っているわけにもいかず、そろそろ帰ろうとアパートに車が近づくにつれて妻の様子がおかしくなる。
「だんだん声が聞こえてくる」
妻を安心させるために今日のところはアパートへは帰らずどこかホテルを探して泊まろうかとも思ったのだが、翌日は月曜日で僕は仕事へ出かけなければいけない。そして妻もアパートへ戻らなければいけない。
つらいかもしれないけれども、戻るのがいいのだろうと、アパートへ戻る。
隣で寝ていた妻がむっくり起き出して台所へと歩いて行き、何かを探しだすかのようにあちらこちらと歩き回る。
「やっぱりあった、ほら」
突然に妻が叫んだ。起き出して妻のところへ行くと妻は壁を指差していた。
妻が指差した先には台所電灯のスイッチがあり、オレンジの小さな光が瞬くように点滅していた。
そして次に反対側のリビング用の電気のスイッチを指差す。そちらのスイッチは瞬いていなかった。どちらのスイッチも切ってある。
「絶対にここに何か仕掛けてある」
という妻の言葉に一瞬、信じそうになる。
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