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(・・・ああ、鳥が飛んでいる)
カイトは今自分が何をしているのかも忘れて、ぼんやりと空を見上げた。
抜けるような快晴の空。
大きく翼を広げて青空を滑空する鳥の姿は、まるで水面で遊ぶ魚のようにも見えて何とも言えない不思議な感覚が胸に広がる。
自分にも翼があれば、こんなつまらない地上を飛び立ってあの大空へ羽ばたいてやるというのに・・・残念ながらカイトは人間で、今の段階ではどうやっても地球の重力から逃れるすべは無さそうだった。
「カイト!! ぼんやりしないで、そこ行ったよ!」
相棒であるカナミの怒鳴り声がカイトの意識を現実に引き戻す。
前を向くとカナミに追い立てられたのか真っ直ぐこちらに向かって駆けてくる影が一つ見えた。
そのスピードは速く、近づくにつれてその影が肉食獣を思わせる四足歩行で移動しているのが確認できる。
大きさは小型の自動車ほどだろうか、ソレは立ちふさがるカイトを確認するとその大きなアギトを開いて咆哮する。
「ギュルアアア!!」
ギラリと光るその牙はナイフを思わせる鋭さを持っており、その体面はつるりとした金属でコーティングされている。
機械獣。
動物を模した機械仕掛けの生命体。
元々人の手助けをするために生み出されたその存在は、とある歴史的事件をきっかけに人間に牙を向く敵となった。
「おーし、少し遊ぼうか子猫ちゃん」
気楽な様子でそう言って、カイトは額にかけていたゴーグルを下ろして眼に装着する。右手を覆っていた手袋をゆっくりと外すと、そこに現れたのは機械仕掛けの義手であった。
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