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昇降口を出てふと空を見上げると、星が控えめに瞬いていた。12月も半ばの午後7時過ぎ。太陽はすでに地平線の下だ。
視線を空から正面に戻し、校門に向かって歩き始める。すると頭の中に人の声が流れ始めた。少し前に聞いた会話の声だ。ため息が白い雲となって口からもれた。
「フミ?」
校門を出てすぐにある横断歩道。タイミング悪く信号は赤で、その色が青に変わるのを1人で待っていると、背後から呼ばれた。
誰の声かはすぐにわかった。何で? と思いながら振り返る。案の定、そこにいたのは、
「トシ」
だった。幼なじみで同級生の、竹中利樹。
「どうして学校にいるの? グラウンドで練習じゃなかったの?」
トシは私のほうへ来ながら、「今日は視聴覚室でミーティング」と言った。
わが校の硬式野球部は創部30ウン年。その歴史の中で最高成績は県大会ベスト8。しかしそれも今は昔の話で、近年は初戦敗退は当たり前、強豪校にとっていい肩慣らし相手という状況。
ところが今年の秋季大会、何と、地区大会を突破! 勢いはそこで止まらず、何と何と、あと一歩で神宮球場というところまで勝ち進んだ。
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