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加奈は、信治が両親に会うことは逆効果かもしれないと思いながらも、信治の意志の強さを受け止め、彼と両親を合わせることにした。
その日、信治が加奈の自宅を訪れた。
加奈の母、由美は無言で彼を居間に招き、加奈の父、孝道の前のソファに座らせた。
孝道は苦虫を噛み潰した様な表情して、信治を睨んでいた。
信治は意を決した様に話し始めた。
「おじさん、お久しぶりです。ずっと加奈さんとはお付合いさせて頂いていました」
孝道はまったく表情を変えない。
「今度、僕は三等空尉に昇進して、自衛隊の士官として充分な給与も頂いています。救難隊ヘリコプターの機長として様々な人命救助にも携わっています。僕の仕事は皆さんに誇れるものだと自負しています。是非、加奈さんを・・」
そこまで言った時、孝道が立ち上がった。
「何を言うか!! 人殺しの自衛隊の癖に、誇れる仕事だと!? お前なんかに加奈はやらん、帰れ!!」
物凄い剣幕だった。
その日、信治は肩を落として帰宅したが、三日後、もう一度、加奈の自宅を訪れた。
今度は、玄関先で、ドアが開くとバケツの水を掛けられた。
それでも、信治は引かなかった。
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