理不尽なさよなら

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その日、台風が近づいていたが、加奈の両親(孝道と由美)は、孝道の実家のある伊豆諸島の利島へお盆の帰省をしていた。 台風は、明日の早朝、利島の横を掠めるコースを辿っており、既にフェリーやヘリコプターによるアイランドシャトルは、昨日の夕方から欠航していた。 昼を過ぎると、急に風が強まり断続的に大粒の雨が降っていた。 午後三時頃、実家の台所で家事をしていた由美が、突然 背中の激痛を訴え倒れた。 孝道は車で、由美を島の診療所に連れて行った。ここには医師が一名常駐してくれており、一通りの検査が受けられる。 直ぐにレントゲンと超音波検査で分かった病名は・・ 「大動脈乖離ですね。非常に危険な状態です。今にも動脈が破れる可能性があります。緊急の処置が必要なので、本土の病院への移送処置をします」 と米山医師が言った。 米山は直ぐに、東京消防庁にヘリコプターの要請をしてくれた。 孝道は安堵して由美のベットの横で手を握っていた。 (三十年も一緒に連れ添ったのに、こんな所で死なせる訳にはいかない・・) 孝道は由美を本当に愛していた。 米山医師が電話を終えて病室に来てくれた。     
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