理不尽なさよなら

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手術が終わる少し前に、加奈の携帯に着信があり、加奈は電話を掛けに席を立った。 手術が終わり、担当医師から無事成功したと報告を受けた。 孝道は胸をなでおろした。 (これで、加奈に・・) と思っていた。 しかし、加奈はなかなか戻って来ない。 (どうしたんだろう?) そう思っていると、加奈が戻って来た。 顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。 「信治のヘリが事故で・・・ 墜落して信治が死んじゃった・・」 孝道は頭をハンマーで殴られた衝撃を受けた。 やはりあの機長は信治だった。 信治のヘリは亀田総合病院から百里基地に戻る途中、高度五千フィートでテールロータに異常が発生した。そこは、市街地の上だった為、機長の信治は、乗員全員をパラシュート降下させた後、ヘリをオートローテーションに入れ、海上へ操縦を試みた。しかし、台風の風に煽られ、途中でバランスを崩し、海上に墜落したとの事だ。パラシュート降下した3名は無事だった。市街地への墜落を避ける為、パラシュートの脱出が出来なかった信治は犠牲になってしまった。 信治は最後まで、誇れる仕事をしたのだ。 孝道は妻を救ってくれた信治にありがとうも言えなかった。 あの日、彼への行為についても謝る事が出来なかった。 そのさよならの理由は、あまりにも理不尽であった。     
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