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1.改造人間
私は生まれ故郷も親も知りません。私が覚えているのは、嵐の夜、白衣を着た男性が私にメスを入れているところだけです。そのあとの記憶、その前の記憶、私にはありません。
目が覚めると、天井から吊るされていました。足がありませんでした。ノイズがかかっているように、脛から下が見えません。私の手も同じです。まるで触手のような形をしています。気持ち悪いです。
しかし、これも、これもこれも、自分の体なんだと気づかされた時、私は発狂しました。
これが現実。
見えることのない過去と未来。
しかし私には見えてしまいました。
絶望の未来が。
迫りくる隕石。
迫りくる宇宙人。
対抗する政府。
敵わない民衆。
次々に赤く染まっていきます。
この映像は、私の意志では止めることはできません。白衣の男性、もとい、博士の意志で動かし、映像を流しているので。
博士の狙いはわかりません。私は未来が見えても、人の感情は見えないので、とても、とても辛いです。しかし、博士は流すことをやめません。
映像は、やがて終盤へと向かっていくようでした。建物は荒廃し、その土地から民衆は消え去り、人っ子一人いません。隕石がもう降ってくることはありませんでしたが、生き物すべてがこの世から消えてしまったようでした。
しかし、隕石が降った後、落ちた直後、生き物が生まれました。
見たことのない生命体。瓦礫で覆われるその体は、何とも歪で気味の悪いものです。博士は、言いました。
「君は、これを排除するのが、仕事だよ」
その言葉を最後に、私は意識をシャットダウンしました。
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