仕事 - 2

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 地域が地域だからか全国的なものか、と問われるとどうやら地域的なものらしい。確かに、都心はオフィスやビル街だとか、嫌なことを思い起こさせるものが多すぎる。どうせ永遠に生きるなら、コンクリートジャングルを選ぶ人は稀なのだろう。  だから、人を見つけたときはついつい目で追ってしまう。  その人は同い年くらい、二十代の女性だった。高身長で大きなつり目、髪は長くて後ろでまとめている。季節はずれの丈の長いコートが暑そうだ。  それ以上に目をひいたのは、頭から大量の血を流していることだった。  血を流している人というのは案外珍しくない。怪我を負っても元に戻るのだから、と無茶をする人はとても多い。服が汚れるので滅多にやらないが、私も数年前は割と無茶をしていた。  何らかの嫌悪感や記憶に耐えかねて、死にたがる者は少なくはない。 特に都心のこういう高層ビルでは、毎日数十人も飛び降りている。なんて無駄なことだろう。一日で身体が元に戻る以上、意味がないことであるし、痛み自体は感じるというのになんだってそんなことをするのだろう。眠れはするのだから、一日中寝ている方がましなのではないだろうか。今なら空腹を気にせず永遠に眠り続けることが出来るのだから。     
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