仕事 - 4

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彼女もそんな宗教家の一人で、何らかの使命を帯びているのだろうか。だとしたら早めに立ち去った方が良い。 「それでは、私はこれで。」 「お前はこれからどこに行くんだ。」  男口調のその女は無遠慮に呼び止めてくる。初対面にお前とは、同年代に見えるとはいえ失礼ではないか。少しむっとしながら答えてやる。 「仕事ですよ。早く行かないと今日中に作業が終わらないかもしれません。」 「さっき久しぶりに人と話したって言っていたよな、仕事って、何をやっているんだ。」 「機器の修理ですよ、壊れた自社製品を直してまわっています。」 「それだけか?」  こいつは何を言いたいのだろう。 「えぇ、それだけですよ。貴女には退屈な仕事に見えるでしょう。」  呆れたように首を振ってみせる。言外にもう黙れと示したつもりだったが、伝わっていなかったらしい。 「誰もいない場所の?」  ついに、彼女に指摘されてしまった。 「ええ、そうですね。」 「それをして何になるんだ。誰もいない場所のものを直して。使っている人がいるわけでなしに、何のためになるんだ。」  ああ、ついに。いつか誰かに言われると思っていた。  自分でもわかっている。  私は毎日、壊れた機械を、誰も使わない機械を直してまわっている。故障の信号を自動で取得するリストに沿って、毎日自転車を走らせている。     
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