通勤路 - 1

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一緒になりたかったあの人を食べさせるためか、この国を支えているという使命感か、それとも生きるための仕事かお金か。 どれも何年も前から意味はない。全く最高な世の中だ。  顔を洗って、スーツに着替えて、一回布団に戻って、温まりながらたっぷり三十分悩んで、今日も出勤することにする。今日もいい天気だし、この慢性的な貧血状態以外は健康な身体をもっと有効活用しても良いだろう。  今のご時勢、行こうと思えば宇宙でも行ける。元上司のようにもっと面白い仕事を求めて世界中を飛び回る生活をしてもいいはずだってのに、出勤するのかお前は、と囁く自分もいるがそこは無視をする。 事実を言ったらきりがない。その上私はまだ自分が何をしたいのか知らない、そういう時は現状維持をすれば一番無難だ。そうやって私は生きてきた。  外に出たら日差しに目が眩んだ。今日は本当にいい天気だ。見上げた拍子に目が眩んだ。  数年前のあの瞬間、あの気持ちのよい昼下がり、立ちくらみで一寸くらっとしていたあのときによく似ている。  例の日、世界は変わってしまった。人間は永遠の地獄に落とされたのだと私は思う。今が最高と話す友人もいるが、高熱に浮かされた幻覚なのだと思う。     
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