有給休暇 - 1

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有給休暇 - 1

 埃で真っ白になり、電気も通っていない、自動(ではもはやない)ドアを押し開く。掃除をしろと何回言っても彼は箒の一つも持ち出さない。高熱のせいというよりかは、元来の性格なのだと学生時代の彼を思い出して考える。  この分では早晩、扉が開かなくなるだろう。建築物とは、保全作業があってこそ正常に機能するものだ。ここ以外の無人街は酷いものだ。数年前に所用で西の大都市に訪れたが、植物がコンクリートの基礎を裂いて群生しており、ビルは殆どが崩れ落ちていた。植物とは元来生命力に溢れ、恐ろしいものなのだ。その日の夜、私は動けない身体を植物が入り込んで、血管一本一本を割かれる夢を見た。ベジタリアンになぞ決してなれない。今の身体は食事を必要としておらず、野菜を食べる必要がないことに感謝したくらいだ。     
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