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有給休暇 - 2
「それで、何かあったのか? 前回来てから、まだ四日目だろう。」
「有休消化だよ。」
上司の机上には誰も見ることはない有給願いが乗せられている。心身に異常を感じたらすぐ休むのは社会人として健やかに働き続けるための、いわば社会功利に必須の行動だ。上司がいた頃には認可されないであろうが、不在なのだから代理として決裁するのは仕方ないことだ。
「そういえば昨日、変な人に会ったよ。」
「人か、珍しいな。」
私はタイラに、昨日出会ったあの衝撃的な女性のことを話した。
何気ない調子で本当の目的を切り出せただろうか。すぐさまにも、友人に愚痴を吐きたい程に、彼女の存在は私の頭の中に巣食っていた。しかし甘えるように甘えるには私の精神は柔軟に出来ていない。
はたして、目的を達成した私は安心して呼吸を行う。
幸いにも彼は全ての話を口を挟まずに聞いていた。
「美形、荷物、死への警告。」
ぶつぶつと口にして彼は考え込む。熱で空回りする思考の片鱗を見せず、即座に答えが出てくるのは彼の元来の性質だろう。
「もしかしたらヴィクター工学の一派なのかもしれないな。」
「ヴィクター工学?」
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