通勤路 - 1

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いい加減に彼は、病人の癖して毎日同じ場所にいないのをやめてほしい。心配して毎週末様子を見に行く身にもなってほしい。書き置きくらい残してくれてても良いじゃないか。まるで友人じゃないと認識されているようで、実際そのように振舞われており、とても悲しい。  出勤中、自転車を走らせながらぶつぶつと文句を言う。人が通りかかればさぞ不気味だろう。  例の日からしばらくして、自転車通勤に切り替えた。来るかどうかわからない電車なんて待っていられない。それに、出勤すると決めたなら遅刻はしていられない。  ロードレース用の良いバイクらしい、私には過ぎた宝は今日も軽快に車輪を回している。誰もいない店舗より拝借したため、詳細なメーカー名はわからない。わかったところでメーカーが存在している可能性は限りなく少ない。 日の光だけでなく風まで気持ち良い。次の休みは土日にしようか、いつかみたいに自転車で多摩川沿いを延々に下ったらどんなに気持ちが良いだろうか。  そういえば、このあたりの道も昔に比べてずいぶん古くなってきた。道路の亀裂をよけながら進む。パンクなんかしたら一大事だ。タイヤのゴムすら生産されているか怪しい。生産されているとしても宇宙工学や様々な研究者に優先して供給されているはずだ。     
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