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通勤路 - 2
例の日、哲学者がテロスの日と呼んだあの日、世界中の七十億人は残さず不死の身体となった。この世界では誰もが身をもって知っていることだ。
肉体が腐り始め人を噛む腐乱死体となったとか、知性のなくなった化け物と成り果てたとかそういったことではない。
ただ単に、人類種は呼吸も食事も一切、一斉に必要なくなったというだけだ。
原因は今も研究している機関がいるのだろうが、私の手元に情報がおりてくることはない。
マスメディアという存在がいなくなって久しいのだ。私がテレビを最後に見たときに話していた内容によれば、細胞内の働きを制御するグアノシン三リン酸が過剰分泌され、神経に自分は健康的な状態が一生続くのだと誤解させているためだそうだ。
しかしそれならば、怪我をした状態でテロスの日を迎えた者がその状態のまま自己修復することが説明つかないように思う。
例えば、開腹手術を受けていた患者などは、どれだけ縫おうと回復された身体状態に修復されてしまうのだ。採血されていた病院で私が実際に見たのだから間違いない。悲惨な状態だった。
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