通勤路 - 2

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 大学は法学部であったし、社会では機械設備の営業として日々邁進していた私には、それ以上原因を究明するすべを持たない。  つまり、自分は自分が何故動いているのかさっぱりわからない。丁度、総人口の98パーセントと同じ状態にあるのだ。  汗もかかないし疲れない、あの昼下がりの瞬間の体の状態が人類全員今まで続いていることだけが、私に理解出来ることだ。  若者は若者のまま、老人は呆けたまま、私は貧血でくらっとしたまま。何であの一瞬だったのか、本当に納得がいかない。私は貧血症でも何でもない。ただ、テロスの瞬間が会社の健康診断で採血された瞬間だった。間が悪いにもほどがある。  今日も風邪で高熱を出したままの、私を友人と思っていない彼よりはましだが、不快には違いない。  おかげで、私は元上司や他の世界中の人たちの様に、テロスの日をはしゃぐことが出来なかった。  飢えることはない。それどころか、空腹を感じることはないし疲れも感じない。望めばいつまでも遊べる、どこへでも行ける身体を皆が手に入れた。はしゃぐのは無理のないことだとは思う。  だから最初に皆がしたことは、仕事や勉強、嫌なもの全部を辞めることだったこともよく理解出来る。     
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