謝罪

5/6
230人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
私は再び、元自分の部屋へ戻り出窓に腰掛けた。 すると、道路から白いワンボックスが入って来るのが見えた。 お義父さんの車だ! 心臓がバクバクした。 どうしよう……。凖はお義父さんとお義母さんに何て言ったのだろう? 謝罪って言ってるくらいだから自分が悪かったと認めたって事だよね?それとも……。 「蓮華ー!来たみたいよー!」 お母さんの声に驚いた。 お母さんは声が大きいから尚更! 「待って!行くから……」 行くから待って……。待って……。 行きたくない……。でも……。 行かなきゃ何も始まらない。 「マロン……」 私はマロンを抱き締め、深呼吸した。 「マロン……。行って来るから待っててね」 マロンにそう言うと、私は部屋のドアを閉めて1階へ向かい階段を、ゆっくり降りた。 階段の下で足が止まったのは、玄関で話声が聞こえたからだ。 懐かしい様な、聞き覚えのある名古屋の方言混じりの言葉。 後、1段降りて右を向いたら目の前が玄関だから私は踏み出せずに居た。 左へ行けば台所へ行く廊下。けれど、降りたら姿を見られてしまう。 お母さんが 「わざわざ遠くから、すいませんね。 どうぞ入って下さい」 と言ってた。 「今日は。お久しぶりです。 この度は、御迷惑お掛けして何て言ったらいいのか……。」 お義母さんの声だ。 「ご無沙汰しとります。 この度は誠に申し訳ありません」 何で、お義父さんが謝ってるの? 「今、お茶出しますから和室で座って待ってて下さい」 お母さんがパタパタと台所へ向かう足音がした。 「凖は何しとるんだ?」 お義父さんがお義母さんに聞いてるみたいだ。 来てる……。当たり前だけど緊張が倍増した。 「まぁまぁ。今日は。 遥々、遠くから。どうぞ入ってお茶でも」 お祖母ちゃんの声がした。 お祖母ちゃんは知らない。何故、今日 凖と両親が来たのか。 お父さんは説明していないのだ。 お祖母ちゃんに聞かれてたけれど 「ちょっと用事があって来るんだよ」としか言っていなかった。 台所に先に行こう。 私、独りで先に行くなんて無理だよ……。そんな勇気無い。 私は、こんなに弱い女だったっけ?違うよね?過去は違った。何で? でも、階段の下で立ち止まったまま自問自答してたって仕方無いじゃない! 私は凖と両親が和室へ入ったであろう足音を確認してから、隠れる様に急いで台所へ向かった。 台所へ入ると 「蓮華、お父さん呼んで来て。 多分、畑だと思うから」 お母さんに言われた。 「あ、分かった」 お母さんに頼まれて少し気持ちが楽になった。 私は、お父さんを探しに裏の畑に行った。 居ないな………。 何処? 畑をウロウロと見渡して、やっと見つけた! 「お父さーん!」 焼却炉でゴミ燃しをしていた。 「おお、何だ?」 「来たよ。お母さんが呼んで来てって。 ゴミ燃し?」 田舎は便利だ。 自分達の土地裏でゴミ燃しをしても何も言われない。 最近は煩くなったらしいけど……。 「そうか、もう終わるから待っててって言ってくれ」 「分かった」 私は再び台所へ戻った。 「お父さんは?」 「ゴミ燃ししてた。もう終わるから待っててって」 「そう。 お母さん、お茶だけ出して来るから」 「うん」 また溜息が出た。 お祖母ちゃんが 「蓮華、御客様にお茶出して」 と言われたけど無理だよ。 「うん。分かった」 と、適当にお祖母ちゃんの言葉をスルーした。 お父さん、まだかな?
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!