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コートの上では俺を除いた4人の選手が泣いていた。
高校3年生の最後の大会が終わった。
俺たちは決勝で負けた。
俺は得点板を呆然と見ていた。
終わったんだ…。これで先輩達が引退する。
もちろん、あの人も…。
ちらっとベンチを見ると、あの人は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「和也!お疲れ!」
ベンチに戻ってくるといつもと同じ明るい声で、
真紀先輩が声をかけてきた。
「…お疲れさまです」
俺は彼女の顔が見れなかった。
「何しけた顔してるのよ!ウチが決勝までいけたのもすごいんだよ!?去年に比べると夢みたいだよ」
真紀先輩は俺の背中を軽く叩く。
「それに、あんたは来年もあるんだから!3年生の分まで頑張ってね!」
「…うっす」
俺は軽く頷くしか出来なかった。
彼女は視線を変えて「翔!翔もお疲れ!キャプテンお疲れさま」と駆け寄っていた。
キャプテンはタオルを頭からかけて泣いていた。
「うん。悔しいね。我慢せずに、泣きな」
彼女はキャプテンにそう言った。
俺は彼女のそういう所が好きだった。
『ねぇねぇ!立川中の上野和也君だよね?』
高校入学した時に歩いてると声をかけられた。
それが彼女との初めての出会いだった。
『そうですけど…?』
『私男バスのマネージャーの青野って言うの』
黒髪にポニーテールをしていた彼女に俺は一目惚れだった。
中学の頃そこそこ選手として有名だった俺に彼女は『もちろんバスケ部入るよね?』と少し強制的な勧誘をしてきた。
もちろん俺はバスケ部には入ったが、すぐに彼女には彼氏がいたとわかった。
翔先輩だった。
聞けば、中学から2人は付き合ってるようで、とても俺が入る隙はなかった。そもそも壊す気もなかったけど。
真紀先輩は面倒見がいい人だったので、無愛想な俺にもいつも気を配ってくれていたし、周りもマネージャーの彼女に色々と頼っていた。
もちろんそれは翔先輩も。
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