ピエロ怒る

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背後のピエロにだいぶ見慣れたはずの私も驚いた 着いて来てたの? ピエロは優雅な仕草でお辞儀をする 凄い脱力してたし 泣きたいし 面倒だし不気味で怖いし 本当はすぐ出て行って欲しかったんだけど 世話をかけたという思いもあるからお茶ぐらい出そうと 座ってて そう言い残してキッチンへ 流しには何か食べたのか片づけのされてない見たことのないペアの食器が水に浸かっていた 瞬間にものすごく腹が立った 水に手を突っ込み食器を掴み振り上げ 床に叩きつける 割れるかと思ったけど意外に軽い音がして転がった ため息をひとつ 拾ってキレイに洗って拭いて ピエロのためにお茶を入れ リビングに持って行き ごめんね、やる事があるから テレビでも見てゆっくりしてて そう言い残しキッチンに戻ると可燃ゴミの袋にさっき洗った食器を入れる 他にも彼氏の使っていたものを無分別にゴミ袋に詰めて行く キッチンからリビング、寝室、お風呂場、洗面台 こうしてみると2年の間に思ったよりたくさんのものがあった事に気がついた 楽しかった些細な記憶にいたたまれない気持ちになる 胸の奥で冷たい何かがぶつかって血を流しているようだった 合鍵は抜いた彼氏のスマホから私を消してゴミ袋に突っ込んだ ゴミ袋は5個 あっさりしたものだ 玄関の外に出した リビング戻るとなんか姿勢の良いピエロがソファに座っていた その非現実感にやっぱり異世界にいるような気がした 私は混乱しているのかも知れない 心に大きな穴が開いてそこに全てが吸い込まれてしまったように何も考えられなかった 私に気が付いたピエロは立ち上がり ポケットから小さなボールを出し自分の頬にぐりぐり押し付けたかと思ったら口から出したりもう一度口に入れ鼻から出したり手の中で無くなったと慌てて見せて私の袖から出したりした ピエロは私が悲しまないようにしてくれているんだと気付いていたけれど 私はそれに付き合えるほどの気持ちを持ち合わせていなかった 今日はいろいろ、ありがとう あなたが居てくれたおかげで私は悲しみが半減したよ でももう限界なんだ 出て行って貰えるかな? そう言ったのにピエロは私の手を取ると立たせ貼りついた笑顔で器用に怒った表情を見せた そのまま玄関に行き靴を履くのを待ち 外に出て鍵をかけるのを待ち 5個のゴミ袋をちらりとみて そしてあの怪しい動きをしつつ 私を夜の街に誘った
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