ピエロ

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ピエロは慣れた様にスポッチャに入って行き 明らかにビビっている受付のお姉さんと対峙 無言の身振り手振りで見事にコミュニケーションをとっていた その間に私はトイレに ふと鏡を見てギョッとする 鏡の中にはもう一人のピエロが居た 朝、あんなに張り切ってお化粧をしてたから涙でマスカラが何本もスジになってしまっていた うーわー、ひどいな 最初に湧いてきた哀しみの後に なぜだか笑いがふつふつと湧いてきた ピエロ上等! 私は持っていたポーチの中身で出来うる限りのピエロメイクを施し さっきよりは少しはマシな顔になってトイレを出た 待っていたピエロは私を見て嬉しいそぶり 近付いてきてそっと抱きしめて頭をポンポンとした 褒められたようである 近くで見るとやっぱり貼りついた笑顔が不気味 そして私を促して卓球台へ ピエロは意外に上手く 私が打つどこに行くかわからない球を魔法のように手元に打ち返した やっぱりピエロは珍しいようで周りに人が集まりだした ピエロは気にする風もなく 急にそばにいた女子2人をにこにこと招き入れなぜかダブルスを組まされ なんだか馬鹿にしたようなパントマイムをした 腹が立った 私は私のチームの女の子とムキになって戦った 周りはどうでもよくなった あんなに上手だったピエロは空振りし なぜかスマッシュがよく入る 結果は圧勝だった 肩で息をしている私にその女の子は テレビの撮影か何かですか? そう聞いてきた うーん、たぶん違う どっちかっていうと…、ナンパ? ピエロのナンパ? ピエロと組んでいた女子が飲んでいたペットボトルの水をブーっと吹き出し 私と人混みをかき分け自販機でお茶を2つ買って戻って来つつあるピエロを交互に見て シュール過ぎる と呟いた
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