9人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ、びっくりした」
雪乃は目を見開いている。それもそうだろう、軽やかに起き上がりはしたが、僕の顔面にはまだいくつもの氷柱が刺さったままだったから。
「なんなのよ、あんた!なんで、平気なのよ!」
雪乃は狼一の手を振り払い、後ずさった。
僕は、自分の顔マスクをとった。僕は首から上が無くなった。
「いやいや、平気じゃないですよ。この特殊メイクするのなかなか時間かかるんですから。まさか1日でダメになるとは…」
僕が近づいていくと雪乃はまた少しずつ後ずさりをした。
「あ…あ…」
「言っておきますけど、僕はこんな成りでもちゃんと人間ですよ」
「説得力なさすぎるだろ」
僕は懐から仮面を取り出し、無い顔につけた。
「顔無し仮面参上…っと。…ねぇ、僕の顔、知らない?」
「いや!」
雪乃は僕の体に両手で触れた。
「え…なんで?」
「僕を彼みたいに凍らせる気ですか?」
雪乃はとても悲しそうな目でこちらを睨んだ。
「違う、違う、違う!そんなつもりじゃなかった!ただ、ただ、私は!」
洞窟の中が吹雪き始めた。
「おい、顔無月!なんとかしろ!寒ぃ!」
「あなたが真実を話せば助けてあげますよ。ほら、願いを言って」
「…お願いだから、彼を助けて。私のせいで彼は…」
雪乃は泣き出した。深々と雪が降ってきた。
「その依頼、引き受けました」
最初のコメントを投稿しよう!