1、冷たい依頼

4/10
前へ
/49ページ
次へ
「数日前、私と兄はその噂を思い出し、立ち入り禁止だった氷柱に行ったんです。そして、石をぶつけました」 雪乃は俯き、スカートを皺になりそうなくらい握りしめていた。 「それで?」 「兄が石をぶつけたとき、氷柱が割れたんです。そして…兄は凍りました。私は怖くなってその場から逃げてしまったんです」 「兄は凍り、妹は周囲を冷やすようになった…」 「どうか、兄を助けてもらえませんか?自業自得だってことはわかってるんです。でも…」 僕は部屋の寒さでぬるくなったコーヒーを飲んだ。 「わかった。…狼一、防寒具の用意」 「おう!」 狼一の声は震えていたし、僕らの口からは白い息が出ていた。 雪乃の顔に笑顔が戻った。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加